子どもの安全を守ろう

(5)交通安全教育

子どもを事故から守るための事例やアイデアを紹介する「ひろしま交通事故防止キャンペーン」。第5回のテーマは「交通安全教育」。幼く、判断力が未熟な子どもたちにどんな指導が効果的なのでしょうか。近隣の小中高で交通安全教室を定期的に開くなど、安全指導に力を入れる可部自動車学校の花谷一宏代表取締役会長兼社長に聞きました。

作文コンテストで
危険回避の意識養う

可部自動車学校代表取締役会長兼社長 花谷 一宏 さん

交通安全活動にどう携わっていますか。

本校は1960年の開設以来、安全を第一とした運転技術を指導し続け、現在13万人を超える運転免許取得者を輩出しています。自動車学校は、地域の交通安全教育を担う拠点であるべきとの考えから、かねてから広島市内の小中高を訪問し、交通安全指導を実践してきました。
2015年には広島県北広島町に分校「千代田交通安全センター」を設置した関係で、北広島町や安芸太田町の小中高でも始めました。現在は広島市内と合わせ、11校で交通安全教室を実施。小学校の場合、低学年の児童には歩行訓練を、中高学年には自転車指導を中心に行っています。中高では自転車マナーに加え、交通標識や交通法規についての啓発も行っています。

子どもたちに交通安全教育を行う上で、特に力を入れていることはありますか。

安全意識を高め、事故を減らすきっかけにできないかと、児童を対象に交通安全をテーマにした作文コンテストを昨年に開きました。交通安全教室を通じ、交流のある北広島、安芸太田両町の小学校に呼び掛けたところ、北広島町立川迫小が応じ、全校児童26人のうち、22人が作文を寄せてくれました。
応募作には「横断歩道を渡る時には目で確認するだけでなく、(車が近づく音など)耳で感じることも大事」「信号が青でも横断歩道は左右を確認して渡ろう」「自転車は左から降りると、車と接触する危険が少なくて安全」といった注意点やポイントを指摘するものが目立ちました。「登下校時に、友だちとおしゃべりに夢中になって、車が通り過ぎるのに気づかなかった」「友だちが自転車で転んでけがをし、事故の怖さを身近に感じた」など、ひやりとした体験を紹介した作品もありました。作品審査は7月に実施。優秀作5作品を選び、表彰しました。
作文コンテストは、児童らが学校や家庭、あるいは本校による交通安全教室で学んだ内容を今一度思い起こし、再確認できた点で意義があると考えています。学校や保護者からも「危険から身を守るための思考力や判断力を養う機会にもなった」との声が寄せられたと聞きます。今後も継続して実施するとともに、参加校を増やしていきたいと考えています。

子どもの交通事故を防ぐためにどう指導すればよいでしょうか。

保護者の役割が重要です。例えば信号の変わり目でも停車しないなど、保護者が運転マナーを守っていないと、子どもがそれをまねて乱暴に自転車を運転するようになります。普段の態度や姿勢が子どもの安全意識のベースになります。保護者が正しく行動することが交通安全教育の基本と言っても過言ではありません。その上で、歩行や自転車利用ポイントを家庭で繰り返し、教えておく必要があります。
子どもの交通事故の特徴の一つは、道路横断中に多く発生していること。信号機や歩道の有無に限らず道路横断時は前後左右の安全確認を確実に行うよう指導すべきです。特に交差点を渡る時は、歩行者用信号が青でも右左折する車が侵入して来るため、目の前の信号だけを見るのではなく、必ず前後左右の確認が必要です。
このほか、「車と車の間からの横断は絶対にしない」「近づいてくる車があれば、通り過ぎるまで待つ」といった点も大事。低学年児や幼児でも、「横断禁止」をはじめとする基本的な交通標識はしっかり教えておきましょう。小学生の自転車事故の多くは出合い頭に発生しています。大きな道路が交わる交差点はもちろん、住宅街の細い十字路、自宅や公園などの敷地から道路に出る際も、一時停止と前後左右の確認が不可欠です。自転車は車道通行が原則ですが、13歳未満の場合は歩道を走ることができます。その際は車道寄りをゆっくり進むのが基本。ただし歩行者が多い時は自転車から降り、押して歩く習慣を身に付けるよう指導しましょう。

今後の活動は。

千代田交通安全センターには4月、約500坪(1655平方メートル)の敷地に、高齢者が運転の講習を受けるための専用コースが完成します。 コースは交差点や急カーブ、信号機、踏切などを備えているため、近隣地域の小学生を集め、より実践的な交通安全教室も開催する方針です。 学校への出張教室との相乗効果も期待できるでしょう。 活動の一層の充実を目指します。

企画・制作 中国新聞備後本社、事業情報センター