子どもの安全を守ろう

(3)地域で守る交通安全

子どもを事故から守るための事例やアイデアを紹介する「ひろしま交通事故防止キャンペーン」。第3回のテーマは「地域で守る交通安全」。地域住民が連携して、子どもを交通事故から守るにはどんな取り組みが大切でしょうか。子育て支援などの地域貢献活動に取り組む広島市地域女性団体連絡協議会の月村佳子会長に聞きました。

参加しやすく効果的
「ながらパトロール」

広島市地域女性団体連絡協議会 月村 佳子 会長

広島市地域女性団体連絡協議会とはどんな団体ですか。

1948年、初の公選広島市長を務めた浜井信三さん(故人)が、母子の健康福祉の向上や平和の推進を図ることを目的に立ち上げた「母子愛育会広島市連合会」を前身とします。主婦をはじめとした一般女性が会員として参加し、原爆ドームの保全活動をはじめ、子育て支援や環境美化など、さまざまな社会貢献に取り組んできました。71年に現名称に変更し、近年は料理教室や体操教室といった文化講座も運営しています。現在の会員数は約5千人。中区、西区、佐伯区、安佐南区、安佐北区の5ブロックで各会員が地域で活動をしており、その柱の一つが子どもの交通安全の推進です。

子どもを交通事故から守るためにどんな活動をしていますか。

各地区の役員が中心となり、会員、町内会などの地域団体と連携して登下校時の見守りを毎月数回実施。小学校を訪問しての自転車教室を警察や交通安全協会と共同で開催したり、児童と一緒に地域の交通安全マップを作成したりしています。しかし、子どもの安全を守るには、こうした定期的な活動だけでなく、普段から目を配る必要があります。
そこで、当協議会では誰でも気軽に参加できる交通安全活動として「ながらパトロール」を推進しています。登下校時間に合わせて、犬の散歩や買い物、ジョギングなどに出掛け、通学路などを歩く子どもたちを見守る活動で、声を掛けても警戒されないよう、参加者には特製の腕章を着けてもらっています。日常生活の中で無理なく続けられる上、防犯にも役立つと地域の皆さんに喜ばれています。

通学路で交通事故を起こしやすい場所や子どもの行動は。

私自身、南観音地区で登下校時の見守りに携わる中で特に注意しているのは、通学路の途上にある歩道橋周辺です。歩道橋の階段を降りた途端に走り出す子どもが多く、背後からスピードを出してやって来る自転車にひかれそうになるケースが頻発しました。危険を防ぐため、近隣の小学校や警察にお願いして、歩道橋の昇降口付近の道路に「歩行者に注意」の看板を立ててもらうなどして注意を促しました。このほか、道幅が狭く歩道と車道の区別がない通学路で2、3列になって歩く児童の姿もよく見掛けます。登下校の時間帯に車の通行規制が行われていない通学路、ガードレールがない歩道も注意が必要です。
保護者やPTA、地域住民が子どもと一緒に通学路を歩き、危険箇所を洗い出すことをお勧めします。その際は、子どもの目線の高さを意識することが大切です。大人なら気にならない背の低い塀や樹木でも、子どもにとっては視界を妨げる危険箇所になる場合もあるでしょう。気になる場所があれば「ここは危ないね。どうしてだと思う?」と問い掛けて本人に考えてもらうと強く印象に残り、安全意識が高まります。その上で「車道にはみ出さない」「車の動きに注意する」「道路を渡る際は必ず立ち止まって左右確認する」といった注意点を学校、家庭、地域の集まりなどで繰り返し伝えることが大事ではないでしょうか。

地域ぐるみで交通安全の活動をする上で何を重視していますか。

地域の多様な人々が参加し、情報共有を徹底することです。例えば南観音地区では月1回、近隣の小学校に当協議会員をはじめ、社会福祉協議会、町内会、老人会などの関係者が10数人集まって意見交換会を行っています。「道路の反対側から子どもが飛び出してきた」「友人と会話しながら自転車に乗る子どもが目につく」といった登下校の見守り活動での気付きや交通事故の危険箇所や不審者の情報などについて、自由に話し合うことで課題を見つけ、より効果的な活動を目指しています。
ただ、地域で連携して活動するには、子どもを含む住民同士が「顔の見える関係」であることが基本です。交通安全のためとはいえ、会ったことのない大人にいきなり注意されても、子どもの心には届きにくいものです。当協議会は、普段からのコミュニケーションを大切にしようと、町内会やPTA、子ども会などのイベントには積極的に参加し、お手伝いするよう心掛けています。子どもや保護者と接する機会を多く持つことが重要です。地域に暮らす人々が身近な関係になるほど、交通安全活動の参加者が増え、効果も高まると思います。

企画・制作 中国新聞備後本社、事業情報センター