子どもの安全を守ろう

(2)夏休み中の交通安全

子どもを事故から守るための事例やアイデアを紹介する「ひろしま交通事故防止キャンペーン」。 第2回のテーマは「夏休み中の交通安全」。 学校生活から離れ、子どもの行動範囲が広がる夏休みに起こりやすい交通事故の特徴や防止策について、 広島県環境県民局県民活動課交通安全対策室の宮庄律和室長補佐に聞きました。

広がる行動範囲
家庭での教育大切

広島県環境県民局県民活動課交通安全対策室 宮庄 律和 室長補佐

交通安全対策室はどんなことに取り組んでいますか。

県全域で陸上交通の安全を図ることを目的に、警察本部や教育委員会などと協働し、活動しています。具体的には、年間の交通安全推進施策を立案し、市町や関係団体と連絡を取りながら、計画を実践しています。子どもや家族、地域に対し、交通安全の意識を高めるための広報や啓発も重視しており、交通安全教室をはじめ、自転車体験教室などのイベントを関係各所と連携して開催しています。

通学期と比べ、夏休みの交通事故には特徴がありますか。

2017年までの5年間、県内で中学生以下の子どもが関係した交通事故発生件数を月別にみると、4~7月の4カ月間は月平均で約230件なのに対し、夏休みに当たる8月は161件と、発生件数そのものは通学期より減っています。
しかし、気を付けてほしいのは事故が発生しやすい時間帯や場所です。通学期では登下校の時間帯に交通事故に遭うケースが顕著です。その意味では、通学路の見守りなど対策を立てやすい面があります。一方、夏休みは登下校のサイクルがなくなるため、一定の時間帯に子どもが路上に増えるといった状況は考えにくい上、行動範囲が広がる分、あらゆる時間帯や場所で交通事故が発生する可能性が高くなるともいえます。
先述のように過去5年間の月別データでは、8月は子どもの交通事故発生件数が減るものの、交通事故による子どもの負傷者数は462件で最多です。これは、この時季にレジャーや旅行などで親や親戚などが運転する車に同乗し、事故に巻き込まれるケースが増えるという事実を示しています。

夏休み中の交通事故を防ぐため、ドライバーが注意すべき点は。

たとえ普段は人通りが少ない生活道路であっても、路側帯をはみ出しての通行や死角からの飛び出しなどが起こり得ると、危険を予測しながら運転すべきです。運転中に子どもを発見した時は、スピードを落とすとともに、道路の反対側も確認してください。そこに親や友人がいると、急に飛び出してくる危険があります。
夏休みは子どもが自転車を利用する機会も増えます。自動車対自転車の事故では、交差点左折時に歩道を通行する自転車を見落として衝突したり、駐車場の出入り時に歩道を通行してきた自転車を見落として衝突したりするケースが目立ちます。一時停止による安全確認を怠らないようにしましょう。
子どもによる交通ルールを無視した行動も少なくありません。「左右の安全確認をせず、急に道路を横断する」「渋滞で停止している車両の間を横断する」「2人乗りをしてバランスを崩して転倒する」「信号の変わり目に交差点に侵入してくる」といった事態も想定した運転を心掛けてください。このほか、車に子どもを乗せる場合はシートベルトの着用を忘れてはいけません。

家庭の果たす役割は重要ですね。

家庭で過ごす時間が長くなる夏休みは、子どもに交通安全のマナーを身に付けさせ、習慣化させるためのチャンスと捉えてください。 例えば、親は運転者の立場で、子どもは歩行者や自転車利用者の立場で、日頃の交通行動を振り返りながら、どんな危険があるのか、どうすれば安全なのかを話し合うようお勧めします。その上で「道路を渡る時は横断歩道や歩道橋を渡る」「横断歩道は青になっても車の通行をよく確認してから渡る」「道路や車の近くで遊ばない」といった交通安全の基本を今一度、確認し、徹底してほしいと思います。時間があれば、親子で通学路を一緒に歩き、危険な場所についての認識を共有しておくと、新学期の備えにもなります。

自転車利用時の安全マナーなどについてもアドバイスをお願いします。

「友人とおしゃべりしながら運転しない」「急にスピードを出したり、急ブレーキをかけたりしない」「友人らと並走せず、縦一列で走行する」「道幅が狭い場所や人が多い場所では無理に通行せず、押して歩く」「荷物は手に持たず、かごに入れる」といった習慣もぜひ身に付けてほしいものです。
こうした家庭での教育だけでなく、地域ぐるみの取り組みにも期待します。東京などではラジオ体操で集まった子どもたちに交通ルールを教える時間を設け、効果を上げた事例もあります。地域でのイベントを活用した交通安全教育も考えてみてはいかがでしょう。

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