子どもの安全を守ろう

(5)サイクリングの安全

子どもを交通事故から守るための事例やアイデアを紹介する「ひろしま交通事故防止キャンペーン」。第5回のテーマは「サイクリングの安全」です。尾道警察署地域課地域指導係長で「サイクルポリス隊」の隊長を務める杉山健太郎警部補(40)に隊の活動や自転車の安全な利用法について聞きました。

広島県尾道警察署地域課地域指導係長
サイクルポリス隊長 杉山 健太郎警部補に聞く

広島県尾道警察署地域課地域指導係長 サイクルポリス隊長 杉山 健太郎警部補

スポーツ自転車 扱い方注意を

自転車マナーの普及

サイクルポリス隊を結成した目的を教えてください。

瀬戸内しまなみ海道の発着点である尾道市は、風景や町並みの美しさから近年は特にサイクリング愛好者の注目を集めるようになりました。2016年に尾道市を訪れたサイクリング客は18万人を突破。人気が高まる中で、自転車の安全利用がこれまで以上に大切な課題になりました。
全長70kmに及ぶしまなみ海道のサイクリングコースの大半は一般道です。車の往来は多く、農作業に携わる人や高齢者が歩いている姿をよく見掛けます。一方、しまなみ海道や尾道を訪れるサイクリストは初心者から上級者までさまざまです。レンタサイクルで初めてクロスバイクやロードバイクに乗る観光客も少なくありません。
尾道署管内で2016年に発生した自転車の絡む人傷事故は50件で、2人が死亡しています。物損事故を含めると209件に及び、市街地での信号無視やスマートフォンを操作しながらの運転、サイクリングロードでの並走といったルール違反も目立ちました。市内には路地や坂が多いことも自転車事故のリスクを高めています。
サイクリングの聖地にふさわしい自転車マナーの啓発と普及を目的に昨年10月、海道沿線を管轄する尾道署と因島署(今年4月に尾道署に統合予定)が合同でサイクルポリス隊を発足させました。

街頭などで安全指導

活動の内容は。

隊員は両署の10人。パトカーと同じ白黒塗装を施し、サイドミラーを取り付けたオリジナルの自転車に乗り、交通安全イベントなどで運転ルールやマナーについて指導します。具体的には毎月1日と15日に、交通安全協会と連携し、管内にある小中高校の通学路周辺や交差点などで自転車運転者や歩行者に安全指導をします。
またJR尾道駅近くの土堂踏切は、渡船で向島へ通学する高校生が自転車で集団になって通行し、車と接触する危険性が高いことから、昨年11月にJR職員と共同で見守りと指導を行いました。
同じく昨年11月に開催され、約1800人が参加した「瀬戸内しまなみ・ゆめしま海道サイクリング大会2017」では誘導を担当。安全な大会の運営をお手伝いしました。

自転車の乗り方を指導する上で重視している点は何でしょう。

自転車は車両の一種で、車道通行が原則との認識をしっかり持つことが全ての基本です。乗車は常に自転車の左側から乗りましょう。右側から乗ると、後ろから来る自動車に接触する危険性があります。発進は最初に後方を確認し、次に左右を確認します。こぎ出す際は、右足からペダルを踏むこと。左足から踏み出すと、自転車が右側に傾き、自動車に接触する恐れがあります。
最近は、クロスバイクやロードバイクといったスポーツ自転車が人気です。一般の自転車と扱い方が少し異なる点にも注意が必要です。例えば一般の自転車なら、サドルの高さは両足が地にしっかり着くくらいが安全です。しかしスポーツ自転車は片足の爪先が地に触れる程度が良いとされます。この場合、停止する際は、サドルからお尻を下ろした後で、足を地に着けると安全です。スポーツ自転車は車輪に力が伝わりやすいよう造られているので、一般の自転車と同じ感覚でこぐと思った以上にスピードが出るので気を付けましょう。
クロスバイクはブレーキの効きが特に良いため、前輪のブレーキだけ掛けてしまうと、後輪が浮き上がり危険です。坂道を降りる時などのブレーキは前輪と後輪で4対6か3対7の割合で掛けましょう。ロードバイクはタイヤが細いため、滑りやすいので注意してください。縁石など段差のある場所を通る時は、速度を必ず落とします。前傾姿勢を取り過ぎると、前方の視界が狭くなるので、少し腕を伸ばしてリラックスした姿勢を心掛けてください。こうしたスポーツ自転車を子どもが利用する場合は、公園などの安全な場所で必ず練習しておいてください。

日頃の点検や整備も大切

子どもの自転車事故を減らすには何が大切でしょう。

尾道署管内で昨年1年間に発生した中学生以下の子どもの自転車が絡む人傷事故は2件。いずれも小学生が交差点を通行する際に起きています。こうした事故を防ぐには、一時停止や安全確認などの交通ルールやマナーを徹底する必要があります。
運転の仕方はもちろん、乗る前の点検や整備も大切です。子どもが乗る自転車はタイヤが泥だらけだったり、空気が抜けていたりするなど、手入れが行き届いていないものも多く、事故を起こすもとになります。ハンドルが曲がっていないか、ブレーキが効きにくくなっていないか、ライトはちゃんとつくか、普段から保護者と一緒に確認する習慣を付けましょう。走行時の安全性を高める上では、右折や左折、停止をする際に「手信号」を使えば効果的です。
サイクルポリス隊では今後、小中高校での自転車教室をより積極的に開き、安全な利用法について実地に指導していく予定です。隊としての活動を充実させることで、交通事故のない安全な町づくりに貢献したいですね。

企画・制作 中国新聞備後本社、事業情報センター