一瞬で人の命を奪ってしまう交通事故。広島県内で6月末までの交通事故死者数は63人。昨年同期より7人増えている。子どもが被害者になる事故も後を絶たず、4月には世羅町で、自転車に乗っていた小学3年生の女児が軽乗用車にはねられて亡くなった。子どもを事故から守るために始めた「ひろしま交通事故防止キャンペーン」。2回目のテーマは「先進事例から学ぶ交通安全」。交通事故死者数の減少数が全国1位だった京都府と、ユニークな取り組みを続けている呉市の広署を紹介する。
(迫佳恵)

啓発・検挙… 高まる機運

交通事故死減少 全国1位の京都府

危険箇所マップ 府警、直接届け指導

交通事故による死者数が大幅に減少した京都府。2013年は70人、前年より36人減少し、統計を開始した1948年以降最少で、減少数は全国で1位となった。さらに交通事故件数は1万1387件、前年より984件減った。その効果を生み出したのが、2013年に強化した京都府警の交通死亡事故抑止対策だ。

 京都府警によると、①交通事故多発路線対策②交通安全マップ活動による高齢者交通事故抑止対策③悪質危険運転者対策―を3本柱に展開した。
 取り組みのきっかけは、12年に相次いだ悲惨な事故。亀岡市では、集団登校中の児童らの列に軽乗用車が突っ込み、10人が死傷。京都市東山区の祇園では、軽ワゴン車が暴走し、歩行者7人が死亡、12人が重軽傷を負った。この事故を受け、京都府では危険運転は絶対に許さないという機運が高まった。
 京都府警交通企画課によると、交通死亡事故抑止対策は具体的に、事故発生率の高い50路線を交通事故多発路線に指定し、取り締まりを強化。地理情報システム(GIS)を備えた交通事故分析システムを使い、事故情報を地図上で管理し、取り締まりや街頭啓発活動、交通安全教室などに生かしている。
 また「高齢者の事故を防ぐには、自宅周辺の事故防止が重要」と掲げ、高齢者が多く訪れるスーパーなどの店舗周辺の「交通安全マップ」を作成し、店舗に掲示。マップを基に作った啓発チラシを戸別訪問して届けたり、交通安全教室を開いたりしている。
 悪質危険運転者対策としては、広く情報提供を呼び掛け、効果的な検挙につなげた。さらに「無謀運転検挙チーム」を増員。「無謀運転特別検挙隊」を新たに発足し、悪質運転者の摘発を強化した。
 京都府では交通事故の発生件数、死傷者数は9年連続して減少している。ことしは事故死者数も最小ペース、飲酒が原因の事故死者も出ていない(6月末現在)。取り締まりの強化や戸別訪問など警察が率先して動いた結果、住民に交通ルールを守ろうという意識が広まった。京都の事例を教訓に、広島も学ぶべき点がある。

中学生対象に自転車大会

県内初、マナー向上へ 広署など

自転車マナーの低下が叫ばれている中、広署と広交通安全協会は、中学生交通安全自転車大会を続けている。中学生を対象にした自転車大会は県内初の試みで、注目を集めている。
 ことしは9月21日に開催。大会は生徒4人、教諭1人で1チームを作り、筆記と実技を競う。筆記は5人が、交通規則などの問題に挑む。実技は3人が安全確認やバランス走行を採点される。
 毎年、約10校が参加する。学校側は広署から、予習用に配布された交通安全ブックをもとに、生徒に指導。集会でクイズ形式に問う学校もあるという。
 広署管内では09年、下校中の小学生2人がバスにはねられ死傷した事故が起きたこともあり、とくに子どもの交通事故防止の活動に力を入れている。ことし、広署管内で中学生の自転車事故でけがをした件数は0件。大会を始めた12年は3件、13年は1件だった。
 昨年、県内で登下校中に起きた交通事故は465件。自転車での事故が多く、最近は自転車の運転者が加害者となる事故も注目されてきた。相手を傷つけると自転車運転者に数千万円の賠償責任が認められたり、刑事責任が問われたりすることも。小さな頃からルールを守る姿勢を身につけることが大切だ。
高齢者が危険と感じる場所を調べて書き込んだ交通安全マップ
対策強化の契機となった亀岡市の事故。集団登校中の小学生の列に軽乗用車が突っ込んだ現場(2012年4月)