子どもの安全を守ろう

(2)自転車事故の備え

子どもを事故から守るための事例やアイデアを紹介する「ひろしま交通事故防止キャンペーン」。第2回のテーマは「自転車事故の備え」。夏休みが始まり、子どもたちが自転車に乗る機会が増えるこの時季に注意してほしいポイントについて、日本損害保険協会中国支部(広島市中区)事務局長の深澤政博さんに聞きました。

日本損害保険協会中国支部
事務局長 深澤 政博さんに聞く

日本損害保険協会中国支部 事務局長 深澤 政博さん

安全五則守り リスク対策を

日本損害保険協会はどんな団体ですか。

損害保険会社を会員(2017年4月1日現在26社)とする事業者団体で、損害保険業の健全な発展および信頼性の向上を図り、安心かつ安全な社会の形成に寄与することを目的としています。今年の5月に設立100周年を迎えました。損害保険業の普及啓発や理解促進に当たるとともに、地震や台風などの自然災害、事故を防止するための啓発活動に取り組んでいます。
交通事故防止のための活動にも力を入れており、広島県警と連携して子どもや高齢者が対象の交通安全講習を開催しています。また交通事故のうち、人身事故の多くが交差点やその付近で起きていることから毎年秋、47都道府県別に「交通事故多発交差点マップ」をホームページで公開。昨秋発表した広島県のワースト5の交差点は、舟入本町、広島市役所前、白島(以上広島市中区)、西観音町電停東(西区)、先小倉(呉市)となっています。

加害者になる危険も

広島の自転車事故の現状は。

県警の発表では、2016年に発生した交通事故は9763件で、そのうち自転車事故は1714件と17.6%に当たります。自転車事故の発生件数は前年より281件減っていますが、死者は3人から9人に増えています。
1714件のうち、中学生以下の子どもが関わる事故は197件。登下校の時間帯に多く発生しているようです。自動車との出合い頭の事故が目立つほか、歩行者に接触、衝突するケースもあります。
自転車は気軽に利用できる半面、さまざまなリスクが潜んでいます。自分がけがをするだけでなく、歩行者にけがを負わせたり、自動車などの財物を壊したりするなど、加害者になる危険性をしっかりと認識する必要があります。

自転車事故を起こすとどんな責任が問われますか。

道路交通法上、自転車は自動車と同じ車両の一種(軽車両)に位置付けられており、法律違反をして事故を起こせば、利用者は刑事上の責任が問われます。相手にけがを負わせた場合は、民事上の損害賠償責任が発生します。
 最近では兵庫県で男子小学生が夜間、自転車で歩道と車道の区別のない道路を走行中に60代の女性歩行者と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折などで意識が戻らなくなった事故で、加害者側は約9500万円の損害賠償責任を負いました(神戸地方裁判所、2013年判決)。東京では、男子高校生が昼間、自転車で歩道から車道を斜めに横断した際に、対向車線を自転車で直進してきた20代の男性会社員と衝突。会社員が言語機能を失うなどの重大な障害を負ったケースでは、約9200万円の支払いが命じられました(東京地方裁判所、2008年判決)。

事故を起こしたら?

自転車事故で人を傷つけた時はどう行動すべきでしょうか。

相手にけがをさせてしまった場合は手当てが最優先です。二次災害を防ぐために、路肩や歩道などの安全な場所にけがをした人や自転車を移動させ救急車を呼びましょう。その上で、警察に連絡します。警察への届け出がないと、「交通事故証明書」が発行されず、自転車事故を補償する保険に入っていても、保険金が支払われない場合があります。警察が到着後は指示に従い、状況の説明などをします。治療費などの対応も必要になるため、相手の名前、住所、連絡先などを確認し、可能であれば、事故状況について簡単なメモを作っておきましょう。スマートフォンなどで現場の写真を撮っておくことも効果的です。家庭では普段から子どもと、こうした際の対処法を話し合っておいてください。事故を起こしたら、親や警察にできるだけ早く連絡するよう指導しましょう。

自転車事故を防ぐには何が大切ですか。

①自転車は車道が原則、歩道は例外 ②車道は左側を通行 ③歩道は歩行者優先で車道寄りを徐行 ④安全ルールを守る(二人乗り・並走の禁止、夜間はライト点灯、一時停止・安全確認など) ⑤子どもはヘルメットを着用ーといった自転車安全利用五則を守ることが基本です。
 自転車事故による損害賠償責任に備える手段として、個人賠償責任保険に加入する方法があります。この保険は、自転車事故のほか、日常生活で個人が誤って他人にけがをさせたり、他人の物を壊したりした場合の補償にも適用されます。火災保険や自動車保険の特約として、子どもを含む家族を対象とする個人賠償責任保険が契約されている場合もあるため、両保険に加入している人は確認しておきましょう。

協会は自転車事故防止のためにどんな活動に力を入れていますか。

自転車の安全な乗り方を紹介する冊子「小学生のための自転車安全教室」や自転車事故の実態を伝える啓発チラシなどを作成し、教育機関や自転車利用者に配布しています。
全国の高校などに講師を派遣して、自転車事故のリスクや備えとしての保険の重要性を説明する活動も展開。中国支部では昨年、高校や交通安全協会のイベントで講師派遣を7件実施し、好評でした。今後もこうした取り組みに力を入れ、安心かつ安全な地域づくりに貢献していきます。

企画・制作 中国新聞備後本社、事業情報センター