子どもの安全を守ろう

(1)ドライブ時の安全

交通事故から子どもの命を守るにはどんな取り組みが必要か─。ひろしま交通事故防止キャンペーンとして、子どもを事故から守るための事例やアイデアなどを6回にわたって紙面で掲載します。第1回のテーマは「ドライブ中の子どもの安全」。家族で車に乗って出掛ける機会が増えるこの時季に注意すべきポイントについて、日本自動車連盟(JAF)広島支部事業課交通環境係長の田中浩司さんに聞きました。

日本自動車連盟(JAF)
広島支部事業課交通環境係長 田中 浩司さんに聞く

日本自動車連盟(JAF)広島支部事業課交通環境係長 田中 浩司さん

チャイルドシート 装着忘れずに

JAFの事業について教えてください。

路上での車・バイクのトラブルや事故に対し、現場で応急措置をするロードサービス事業が活動の柱です。
2016年4月から1年間、当支部のロードサービス出動件数は、一般道と高速道を合わせて5万4486件で、前年比2.2%増となっています。
出動理由の多くを、バッテリーの故障、パンク、落輪、燃料切れなどが占めます。事故は2割程度。高速道では、渋滞した車の列に突っ込むといった追突事故やよそ見、居眠りによる事故などです。
そのほかには、交通安全活動や環境保全活動なども推進しています。あまり知られていませんが、モータースポーツの統括団体としてライセンスの発行なども行っています。

シート装着で死亡リスク減

ドライブ中に、子どもはどんな交通事故に遭いやすいのでしょうか。

チャイルドシートの不使用が原因の事故が目立ちます。高速道で衝突事故が起き、衝撃でフロントガラスが割れた際に、子どもが車外に放り出され、アスファルトに打ちつけられたり、後続車にはねられたりして亡くなるケースもあります。
車の事故から子どもの命を守るには、チャイルドシートをきちんと使うのが基本です。警察庁とJAFの調査によると、チャイルドシートの使用率は1~4歳では6割を超えるものの、5歳では4割以下に低下。同じチャイルドシートでも、乳児や幼児用に比べると、学童用(ジュニアシート)の使用率は大幅に下がります。

チャイルドシートを使う際の注意点は。

チャイルドシート使用によって交通事故の子どもの死亡リスクは8割低減されるといわれます。ただし、それは適切に使用されている場合に限ります。取り扱い説明書をよく読み、正しく取り付けるようにしましょう。
道路交通法では、チャイルドシートは6歳以上に着用義務はありません。しかし、気を付けてほしいのは、車のシートベルトが身長140センチ以上を目安に設計されている点です。小さな子どもがチャイルドシートを使わないと、衝突時にシートベルトが首や腹部を圧迫し、人体に大きな傷害を与える危険があります。身長が140センチに満たないうちはチャイルドシートを使うべきです。文部科学省の統計では小学5年生の平均身長が140センチ前後に相当します。

そのほか、子どもの事故で目立つ事例はありますか。

乳幼児が炎天下の車内に残され、熱中症を引き起こす事故は毎年繰り返されます。乳幼児は大人と比べ、体温調節機能が未発達で、高温下では短時間で体温が上昇し、死に至るケースもあります。また、サービスエリアに駐車した際に車から飛び出して、後から来た車にはねられる事故も少なくありません。
「強風が吹いてドアで手を挟んだ」「坂道で停車中、スライドドアが勝手に閉まってけがをした」といったトラブルも報告されています。子どもと車をめぐり、どんなリスクが存在するのかをたくさん知っておくことが、事故防止につながるのではないでしょうか。

子ども安全免許証が人気

子どもの交通事故を減らすために何に力を入れていますか。

広島県警と連携するなどして、交通安全の啓発イベントを開いています。地域イベントの会場や商業施設の駐車場などにブースを設け、パソコンを使った交通安全クイズを年齢別に実施。回答すると、運転免許証そっくりの「子ども安全免許証」をその場で発行し、好評です。このイベントは昨年度は55回実施し、6159人に子ども安全免許証を発行しました。
ことし5月には広島市西区の中学で1年生向けの交通安全教室を展開。時速5キロでの衝突や反射材の効果の疑似体験など実践的な講習を通じ、安全意識の向上を図っています。 保育園児や幼稚園児を対象に、演劇や音楽演奏による啓発活動も行っています。今後はこうした活動にも、より積極的に取り組む方針です。

企画・制作 中国新聞備後本社、事業情報センター