子どもの安全を守ろう

(2)地域で守る、通学路の安全

子どもを事故から守るさまざまな活動を紹介する「ひろしま交通事故防止キャンペーン」。第2回のテーマは「地域で守る、通学路の安全」です。広島経済大(広島市安佐南区)では11年前に学生が中心となって「子ども達を守ろうプロジェクト」を立ち上げ、近くの祇園小で下校時の安全サポートに取り組んでいます。児童の命を守り、健やかな成長を支える活動をリポートします。

広島経済大
「子ども達を守ろうプロジェクト」

「下校安全サポート」活動中の広島経済大の学生
未就学児を対象にした交通安全教室
週に一度行われる「子ども達を守ろうプロジェクト」の会議

下校時の安全対策 大学生が全力サポート

通学路で安全指導

広島経済大では、学生の地域貢献などを支援する独自の教育プログラムを展開しています。
プロジェクトは、その一環として2005年に教員志望の学生ら9人が集まって発足。同時期には、広島市安芸区で小学校に通う女子児童が命を奪われる事件があり、犯罪や交通事故から子どもをどう守るかが、大きな関心を集めました。
発足当時、3年生で初代リーダーを務め、現在は同大の職員である西國真一さん(31)は「子どもたちと世代が近く、親しみやすい大学生の立場で、安全を守るお手伝いができないかと考えたのがきっかけでした」と振り返ります。
現在は、1~4年生の男女33人が参加。木曜以外の平日に祇園小を訪れ、主に二つの活動に取り組んでいます。
一つは、昼休み前後にパトロールを行う「ガード・ボランティア」。体育館や倉庫の裏に不審者が潜んでいないか、割れたガラスなど危険物が落ちていないかを見回り、チェックした上で、児童らの面倒を見ます。

もう一つが、「下校安全サポート」です。校舎西側の通学路を挟んだ向かい側には大きなショッピング施設の駐車場があり、道幅が狭いにもかかわらず、交通量が多く、事故が起きるリスクは低いとはいえません。東側の正門を出たすぐ先には踏切もあります。
プロジェクトのメンバーは、児童が下校を始める午後3時半ごろから、商業施設の駐車場付近、踏切の前、 T字路など3、4カ所に立ち、安全を見守ります。
「ちゃんと左右を見て」「気を付けて帰るんよ」。オレンジ色のベストを着たメンバーが、一人一人に声を掛け、車への注意を呼び掛けます。雨が降る前など、急いで帰ろうとする時は特に注意が必要になります。
現リーダーの同大経営学科3年の森下滉介さん(21)は「危険を自分で察知して、回避する力をどう養うかがポイント」と指摘します。そのため、児童同士が互いに注意し合うことで、安全意識を高めるような指導を心掛けているということです。
同小の竹中雄次校長(62)は、「本校には、900人近い児童が通っています。下校の際、教員や保護者だけでは一人一人に目が届きにくい中で、広島経済大の皆さんの活動が大きな支えになっています。学校としても、プロジェクトと呼応するように、交通安全教育に力を入れ、事故の防止に努めています」と話します。

安全マップ作りも

プロジェクトでは、こうした活動に加え、祇園小をはじめとした市内の小学校の依頼を受け、地域の安全マップ作りの指導にも携わっています。児童と通学路を巡り、危ない場所を発見したら、写真を撮り、地図に落とし込んでいきます。その際には、そこがなぜ危険と思うのかを児童に考えてもらうのが大切とのことです。毎年冬には大学の施設などに未就学児を招き、交通安全教室も実施。紙芝居や人形劇で登下校時の注意点を分かりやすく伝え、好評です。
今後の取り組みについて、森下さんは見守り活動のさらなる充実と他大学との連携を目標に挙げます。「プロジェクトで培ったノウハウを他校に伝え、各地域で同じような活動を実践すれば、救える命は確実に増えるはず」と力を込めます。
子どもを守り、安全な町を育てる活動はこれからますます広がりそうです。

企画・制作 中国新聞備後本社、事業情報センター