登下校中、小中高生が巻き込まれる交通事故が後を絶たない。3月には福山市の小学校の児童3人が下校中、トラックにはねられる事故があった。広島県警によると昨年、登下校中に起きた交通事故は465件。とくに自転車での事故が多いという。ひろしま交通事故防止キャンペーンとして、子どもを事故から守るためのアイデアや事例を6回にわたって紙面で掲載。1回目は「家庭で考える交通安全」をテーマに、親子で通学路を散歩しながら点検するなど、事故防止の身近な取り組みを紹介する。
(迫佳恵)

「命の大切さ」
親から子へ

通学路 親子で点検

危険回避 マップ効果的

子どもの登下校に不安を抱える親は多い。危険を回避する力を養うためには、親子で地域の安全マップを作ることが効果的だ。
 マップ作りは、県県民活動課を中心に各小学校で取り組まれている。広島市立己斐小では6月中旬、3年生と保護者を対象にした地域安全マップづくりがあった。講師は比治山大の学生。一行は班に分かれて通学路を巡り、危険な場所を発見したら写真を撮り、危ない理由をメモした。
 児童は「街灯があるけど道幅が狭いから危ない」などと確認。指導役の同大4年原卓志さん(22)は「危険な場所を子どもから自発的に言わせるのがこつ。自分で判断して初めて学びになる」と指導のこつを明かす。
 調査後はマップ作り。車の出入りが激しい場所や事件に巻き込まれそうな場所などを再度確認するための作業だ。①紙に地図を書く(通学路など家から目的地まで)②公園や店、友達の家など知っている場所を書く③危険な場所の写真を貼り、注意点を文章で書く―という手順だ。宮川直樹君(8)は「狭い道が多くて気を付けているけど、危ない所が新たに分かった。家で今日とは違う道のマップを作ってみたい」。
 学生を指導している比治山大現代文化学部の上之園公子教授によると、親子でマップを作る際、事前に親が子どもの特性を知り、最初は交通指導ではなく客観的に見て歩く「探検」が必要だという。休日を使って通学路を散歩しながら点検するのがベスト。そうすれば、子どもが信号の色の変化、歩行者や車の様子、信号が青でも、横から右折車が通ることなどを発見しやすい。「頭ごなしに注意するのではなく、具体的な場所で体験することで子どもなりに危ない理由を理解できる」という。
 子どもの行動範囲の拡大によってマップを書き足す。上之園教授は「成長に合わせ、保護から育成へ。考える力が備わると応用力となり、離れた場所でも1人で判断できるようになる」と話していた。
「道が狭くて交通量が多いから危険だね」。比治山大の学生と己斐小の児童、保護者が通学路を散策し、危険な場所を確認した
児童や保護者にマップの書き方を指導する学生(真ん中)

「身を守る」親子で読もう

絵本やルール本 問いかけや確認大事

 交通安全について考えるきっかけとして、親子で読む本がある。広島市の中区図書館によると、子どもに自分の身を守る気持ちを高めてもらうために親や教師が活用しているという。
 道路の危険や自転車の乗り方を、かわいいイラストとストーリー仕立ての絵本で伝えると、感情移入しやすく分かりやすい。「きけんは、どこに?」は、どこに気をつければ交通事故の危険を回避できるのかを問いかけ形式の物語で表している。「わるいのは じてんしゃ?」は自転車事故で小さな子どもにけがをさせてしまった男の子の気持ちを素直に描いている。
 ほかにも、自転車事故の罰金や標識について説明する「自転車のルールとマナー」「マークと記号」。実践型の本としてマップキット付きの「子どもの通学支援マップ」、「じぶんをまもろう みんなをまもろう ①みち」などがある。
 中区図書館の司書の福増倫子さん(47)は「本をそのまま読んでも子どもは理解しにくい。本の場面に合わせて『こういうときどうする?』と問いかけたり、実際に道路に出たとき『あの本に書いてあったよね』と確認したりすることが大切」という。子どもが自分に置き換えて考えれば、ルールを覚えやすくて効果的だ。
「親子で事故防止を考えるきっかけに」。
交通安全を呼びかける絵本やルール本