被害者にも加害者にもなりうる自転車事故。広島県内の11月末までの自転車事故は2048件(昨年同期比279件減)にのぼる。うち、小中高生の事故は約3割で、登下校中の事故も後を絶たない。子どもの事故防止対策を考える「ひろしま交通事故防止キャンペーン」。4回目のテーマは「自転車ルールを守る」。子どもの行動範囲が広がれば、交通事故の心配が増す。しかし、身を守るためのルールを徹底していれば、事故の危険回避につながる。
(迫佳恵)

命守る自転車ルール

信号無視や並走 罰則対象

加害者になるケースも

子どもの主な交通手段は自転車。健康や環境への意識が高まり、大人の利用も増えた。身近な乗り物だからこそ覚えておくべきルールを紹介する。
 広島県警交通企画課によると、自転車は道路交通法上、自動車やバイクと同じ車両の一種。車両としての交通の決まりを守らなければならない。原則として車道の左側を走る。右側通行をすると罰則もある。信号は車両用に従う。しかし歩行者用の信号機に「歩行者・自転車専用」の表示がある場合が多く、自転車が横断歩道を進行する場合は、歩行者用の信号機に従う。原則、横断歩道に人がいる場合、自転車を押して渡らなければならない。
 また、ブレーキが故障している自転車、ライトがつかない自転車、反射器材のない自転車には乗ってはいけない。信号無視、並走、2人乗りは罰則の対象となる。「自転車で罰則なんて…」という甘えは許されない。昨年、広島県で自転車の交通違反で検挙した数は9件にのぼる。
 自転車事故は加害者になるケースもある。昨年、神戸地裁は小5男児が自転車で坂道を下った際、60歳代女性に衝突し、重い障害を負わせた事故で、男児の親に約9500万円の支払いを命じた。東京地裁もことし、歩行者が死亡した事故で、自転車側に約4700万円の賠償を命じる判決を言い渡した。
 全国の自転車事故は約12万件。事故の増加や高額賠償を命じる判決が相次いだことを受け、自転車保険への関心も広がっている。自転車には強制加入の保険はなく、個人賠償責任保険に自ら入っておく必要がある。自動車保険などの特約で付けるか、自転車に的を絞った保険に入る。
 各保険会社が打ち出しているのは、年間の掛け金が千~数千円で、賠償限度額が5千万円~1億円のものが多い。保険会社が示談交渉を代行する商品もある。自転車本体に適応される「TSマーク付帯保険」は自転車店で加入できる。点検、整備を受け、最高100万円の傷害補償と最高5千万円の賠償責任補償がセットになっている。
 知らなかったでは済まされないルール。免許もなく気軽に乗れる自転車だが、安全運転の基本を徹底させたい。

「乗る時はヘルメット」徹底

保護者が協力 所持率100% 福山の御野小

福山市の御野小とPTAは、児童の自転車用ヘルメット着用に力を入れている。現在、全児童約300人の所持率は100%。出掛けるときなどは「ヘルメットなしで自転車に乗ってはいけない」と呼び掛けている。
 同小では入学説明会の際、ヘルメットの購入と着用を保護者に呼び掛けている。校区は広いうえ、歩道と車道が分離していない道も多い。2008年の道交法改正で、幼児と児童のヘルメット着用が保護者の努力義務になったのを機に、09年度に着用を独自に義務化。翌年度には所持率100%を達成した。
 この広がりは、保護者の理解があってこその結果だ。光成直美校長は「とにかく保護者が積極的に動いてくれた。できれば購入ではなく、100%購入と言い切ることで意識が高まった」。09年、自転車に乗っていた児童が乗用車にはねられ、ヘルメットのおかげで命拾いしたことも着用ムードが高まった要因という。さらに初年度は補助金を出し、浸透を促した。
 11年には活動が評価され、日本PTA全国協議会の会長表彰を受賞。保護者によると、子どもは積極的に着用して出掛けている。みんなが着用しているという意識が広まると、かぶっていない方が違和感がわくという。
 同小では秋、児童がバイクと接触事故に遭い、転倒。ヘルメットを着用して頭は守られたという例も。6年上田輝和君(12)は「最初は事故をしないし大丈夫と思っていた。でもヘルメットで助かる命があると知って、今は必ずかぶって出掛けている」。決まりを守るだけでなく、なぜ守らないといけないのか―。その意味を子どもに教えることが、自ら考えて身を守る努力につながっている。
「ヘルメットは約束事」。きちんと着用して、自転車で出掛ける御野小の児童