子どもの安全を守ろう

(6)子どもの交通事故の傾向と対策

子どもを事故から守るための事例やアイデアを紹介する「ひろしま交通事故防止キャンペーン」。第6回のテーマは「子どもの交通事故の傾向と対策」。子どもを巡る交通事故の現状をはじめ、特徴や防止策について、広島県警交通部交通企画課の後藤憲一 管理官に聞きました。

横断歩道の通行
歩行者の優先を

広島県警交通部交通企画課 後藤 憲一 管理官

昨年1年間の交通事故の発生状況を教えてください。

昨年、広島県内で発生した交通事故は前年比約15%減の7582件、負傷者数は約16%減の9277人でした。いずれも大きく減ったものの、死者数は1人増え92人に。その半数以上は65歳以上の高齢者が占めています。中学生以下の子どもの場合、交通事故件数は前年比約25%減の272件、 負傷者数は約19%減の590人でした。
しかし、死者数は3人と前年より2人増えました。6月に福山市で3歳女児が信号機のない交差点を横断中に、7月に広島市佐伯区で7歳男児が信号機のない横断歩道を横断中に車にはねられ、亡くなりました。9月には福山市で、9歳女児が遮断機のない踏切を自転車で横断中に列車にはねられ、命を失いました。

子どもの交通事故に特徴はありますか。

272件のうち、歩行中は117件、自転車乗用中が154件です。歩行者の場合は道路横断中、自転車の場合は交差点進行中が目立ちました。
過去5年間の統計によると、月別では入学や進級して間もない4、5月から、夏に向け行動範囲が広がる7月まで事故の発生が多く、時間帯では登下校時に多発しています。

重点課題は何でしょう。

子どもに限らず全体的に言えることですが、横断歩行中に事故に遭い、死亡する割合が高くなっている点を危惧しています。特に横断歩道での、歩行者優先を徹底する必要があると考えています。
ドライバーは横断歩道に接近する際には直前で停止できるような速度で進行するよう法律で定められています。歩行者が横断中の場合はもちろん、横断しようとしている場合も手前で一時停止し、歩行者の通行を妨げないことが大切です。違反した場合は、横断歩行者妨害に当たり、交通違反になります。
日本自動車連盟(JAF)が昨年、 47都道府県の信号機のない横断歩道94カ所で行った調査では、歩行者がいて一時停止した車は平均で8.6%。 広島県は1.0%でワースト2位でした。
横断歩道内及び、その手前30メートルは追い越しや追い抜きが禁止されています。信号機のない横断歩道の手前には「横断歩道または自転車横断帯あり」の路面標示や道路標識が設置されています。これらが見えたら、特に注意して進行しましょう。

子どもへ特に教えておくべきことは何でしょう。

まず、横断歩道が付近にある場合には利用するよう、指導してください。
信号が青でも横断歩道を渡る時は一度立ち止まり、左右を確認した上で横断するのが基本。手を挙げるなど「横断したい」という意図をドライバーに示すことも大切です。一方からの車だけでなく、反対側から来る車にも気を付けましょう。
さらに、車両の直前・直後には横断しないこと、斜めに渡るのではなく、真っすぐ横断するよう伝えてください。 発達途上にある子どもは道路の危険性を十分に認識できず、判断力も未熟なだけに、保護者の役割は重要です。
子どもと一緒に通学路を歩き、同じ目線で危険箇所を確認しましょう。

交通事故を防ぐために力を入れていることは。

広島県警は、過去に事故が起きるなどした横断歩道を「モデル横断歩道」に指定しています。 昨年11月から始め、現在まで全26署管内の計66カ所を指定。
重大事故が発生した場所をはじめ、歩行者の横断が多い場所などで地域住民と連携しながら、歩行者優先などの街頭指導、啓発活動を行っています。
さらに、入学・進級期における児童・生徒の交通事故を防ぐために4月8~17日を対策強化期間に指定。通学路の安全点検や取り締まりの強化、交通安全教育の推進を図ります。
通学路や生活道路が密集する区域の最高速度を30キロに制限する「ゾーン30」の整備を進めており、整備区域は2月末の時点で県内53カ所に広がっています。
このほか、5月11日からは「春の全国交通安全運動」も始まります(20日まで)。
子どもや高齢者の安全な通行の確保をはじめ、自転車の安全利用の指導、シートベルトやチャイルドシートの着用の徹底などに取り組みます。関連団体や住民と連携し、交通事故のない地域づくりの実現を目指します。

企画・制作 中国新聞備後本社、事業情報センター