子どもの安全を守ろう

(6)子どもの交通事故の傾向と対策

子どもを交通事故から守るための事例やアイデアを紹介する「ひろしま交通事故防止キャンペーン」。第6回のテーマは「子どもの交通事故の傾向と対策」。 子どもを巡る交通事故の現状をはじめ、特徴や防止策について、 広島県警交通部交通企画課の久保田康幸管理官に聞きました。

広島県警交通部交通企画課
久保田 康幸 管理官に聞く

広島県警交通部交通企画課 久保田 康幸 管理官

通学時に多発 危険箇所の確認を

昨年1年間の交通事故の実態は。

昨年、広島県内で発生した交通事故は前年比約9%減の8884件でした。発生件数や負傷者数は減ったものの、死者数は91人と、前年より5人増えました。その背景には、高齢者の交通事故の増加があり、死者の半数以上は高齢者が占めています。
中学生以下の子どもの場合、交通事故件数は前年比約3%増の363件でした。負傷者数は前年比約5%減の728人で、死者は前年と同じ1人です。363件の事故のうち、歩行中の事故は156件、自転車による事故は205件です。
過去5年間の統計によると、月別では入学や進級して間もない4、5月から、夏に向け行動範囲が広がる6、7月に多く、時間帯では登下校時に事故が多発しています。

子どもから「手」と「目」を離さない

今年の状況はいかがですか。

2月に子どもが被害に遭う交通事故が3件相次ぎ、危機感を強めています。
福山市の市道では、信号機のない交差点で母親の後を追って道路を横断していた3歳女児が乗用車にはねられ、死亡しました。
同じ福山市にある小学校の正門前では、押しボタン式信号機のある横断歩道を渡っていた男子児童2人が、信号を見落とした軽自動車にはねられ、軽傷を負いました。
さらに、広島市中区の市道では、路側帯を歩いていた6歳男児がバイクと乗用車に次々とはねられ、重傷を負いました。どの事故も保護者や大人の目が届いていない時に起こりました。

事故を防ぐためには、何が大切でしょうか。

幼児や低学年の児童は、道路への飛び出しや横断中の事故が特に目立ちます。発達途上の子どもは、道路の危険性を十分に認識できず、判断力も未熟です。保護者が一緒に歩く場合は、子どもの手をしっかり握り、目配りや心配りを絶やさないことが大切です。
子ども本人にも、信号が青でも横断歩道を渡る際には一度立ち止まり、左右を確認した上で、手を上げて横断するといった、「止まる」「見る」「待つ」を徹底して教えることが大切です。
加えて保護者は、最低でも一度は子どもと一緒に通学路を歩き、同じ目線で危険箇所を確認しましょう。夜間に外出する場合は、明るい服装や反射材を身に付けさせてください。

ドライバーの責任は。

歩行中の子どもに過失がなく、ドライバーの不注意などが原因の事故も多くあります。信号のない横断歩道で子どもが待っている場合には、ドライバーは必ず停車し、歩行者に進路を譲るのが原則にもかかわらず、守られていないのが現状です。学校周辺をはじめ、歩行者や自転車が多い道路を通行する際は特に速度に注意しましょう。「歩行者はいないだろう」と安易に思い込まず、「子どもが飛び出してくるかもしれない」という危機意識を常に持つことも大切です。

「自転車は車両」ルールの徹底を

自転車事故の特徴や注意点を教えてください。

自転車事故は小学校の高学年?から増え、中学生では交通事故の8割以上を占めます。目立つのは、信号機がなく、見通しの悪い交差点での出合い頭事故です。このような交差点では、車両の徐行や一時停止が必要ですが、これは自動車だけでなく、自転車にも言えます。自転車も車両という意識をしっかり持ち、交通ルールを身に付けるよう、家庭や学校で教育する必要があります。
自転車を運転する子どもが、事故の加害者になるケースもあります。2008年に神戸市では、小学5年の男子児童が運転する自転車と衝突した女性が寝たきりになる事故が起き、男児の母親に約9500万円の高額な賠償命令が出ています。

子どもの交通事故を防ぐためにどんなことに力を入れていますか。

各市町や交通安全協会などと力を合わせ、世代に応じた交通安全教室を積極的に開催しています。幼児や小学校の低学年向けでは、模擬信号機を使って横断歩道の渡り方を練習したり、中学・高校生向けでは、スタントマンが自転車事故を再現したりするなど、実践的な教育を心掛けています。
広島県警では近年、通学路や生活道路が密集する区域の最高速度を30キロに制限するといった「ゾーン30」を推進しています。今年3月末には指定区域が県内42カ所に増える予定です。4月6日からは「春の全国交通安全運動」が始まります(15日まで)。地域との連携をさらに深めながら、悲惨な交通事故を一件でも少なくすることを目指します。

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